フィクション

酒の酔いも回ってきたのだろう、エムは熱のこもった口調で話を始めた。「エス!イー!どうしたんだよ!お前たち!俺たちがアヤを応援してやらなくてどうするんだよ!アヤが今まで、俺たちにしてきてくれたことを忘れたのかよ・・・!」「だけど・・・なぁ」「・・・」顔を見合わせるエスとイー。そこにアヤを愛していた男の面影はなかった。しびれを切らしたエムは、二人の胸倉をいっぺんに掴み、叫んだ。「もう一度思い出せよ!あのハワイを!」二人は無表情のまま、顔を下に向けて、決してエムと目線を合わせないようにした。エムは二人の顔を交互に睨みつけたが、少ししてあきらめたのか、二人から手を離し、「ふん、もういいよ。見損なったよ。いや、お前らを親友だと思ってた俺が馬鹿だったんだな」テーブルにあったビールの入ったコップを一気に飲み干し、エムは店を出て行った。周囲は3人の騒ぎのおかげでしんと静まり返り、エスが漏らした一言だけがあたりに響いた。
「え、この店の会計二人で払うのかよ」